過去最強の台風19号来襲
1日目の作業を終え、作業は2日目に入った。
朝8時から塗装をしていると、RRPの最後のお部屋に入居された新しい住人さんがやってきた。
「おはようございます。Facebookの投稿みてきました」
「すごいですね、これ全部つくってるんですか?」
「そう、荷上げから買い出しまで全部自分たちでやってます」と私は答えた。
ほんの少し間をおいて、少し遠慮気味にこう尋ねられた。
「あのー、キッチンの棚の板の寸法が合わないので、ここで切らせてもらってもいいですか?」
「もちろんです!! どんどん使ってください」そう伝えると、住人さんはお礼をいって いったん部屋に戻って行った。
なにげないやり取りであったけれど、
『編集しながら暮らす』が少しづつ形になってきてるな、と実感した瞬間だった。
ほどなくして 8時半頃フクシマさんがやってきて、挨拶もそこそこにさっそく作業を開始した。
フクシマさんは木材の加工とビスドメ、私はとにかく塗装作業を続けた。
お昼を過ぎても13時をすぎても塗装の目処は立たたなかったが、疲れて集中力も切れかけていたので14時にいったんランチにすることにした。ランチはいつも時間節約もあって近所のカレー屋さんだ。フクシマさんは痩せているのにたくさんた食べる人で、巨大なナンをいつもおかわりした。
ちなみにナンのおかわりは、ランチタイムではサービスで無料だ。
15時作業再開。
さらに塗装作業を続けたが、ずべての木材の塗装がいったんおちついたのは16時前だった。
あー、、、この2日間、自分は塗装しかしてない。。。。
これで2人で作業できるので、フクシマさんと2人で塔屋の目隠しの作業を集中して行った。
しばらくして
「うーん、後残りの作業どうしましょうか」とフクシマさん。
「基礎の木材固定だけを暗くなるまでにやってしまって、あとは1人ではできない荷上げだけやってしまいますか?そうすればあと残りは自分ひとりでもできるので」と尋ねると、
「いやー、もう1日来ますよ、、そのほうがいいですよ」とフクシマさんは言った。
結局もう1日作業に来てもらうことにして、暗くなる前にちらかした道具や木材を整理し始めた。
天気位予報では今夜から雨だ。
週末には台風が来る予報が出ていた。
雨が降る前に木屑などを掃除で吸っておかないと固まって取れなくなる。
今日のうちに水に濡れてしまうとダメなものは、室内に移動しなければならない。
結局片付けが終わる頃には辺りは真っ暗で、時計は18:00くらいを示していた。
「今日もありがとうございました。フクシマさん時間あったら飲み物買ってきます。」
「今作ってる塔屋で一服しましょうよ」そういって2人で塔屋にあがった。
電池式のランタンを灯すと、想像していた通りなかなか雰囲気のある空間になっていた。
しばらくおしゃべりして、この日はおしまいにした。
翌日
「過去最強の台風が本州に上陸します、最大限の注意を払ってください。」とテレビが
繰り返し伝えていた。
「風速60mではビニール傘も狂気になります」というナレーションとともに傘がガラスを
突き破る映像が流れていた。
「あー、、大丈夫かな。昨日塔屋に取り付けた木材がもし外れて飛んでいったらただ事じゃない」
そう思い、なんども迷いながらやっぱり紐でぐるぐる巻きにすることにした。
すでに雨も降り出していたが、なにかあったら取り返しがつかないと思い、紐とはさみをもって
雨の塔屋に登った。
昨日全体の半分くらいビスどめした木材に何重にも紐をくくりつけた。
最大瞬間風速60mが吹けば、こんな紐まったく意味がないとも思ったけれど、
やらないよりはやったほうが良い、それは間違いない。
応急作業を終えてあとは祈るばかりであった。
台風が上陸する予想となっていた日は、朝から雨がザーザー降り続いていた。
風はほとんどない。
「依然 猛烈な勢力を維持したまま台風19号は伊豆半島の南東200km地点を北上しています」
とテレビが伝えている。
「まだそんな位置か、東京付近に来るのは21時頃だな、、、」
なんだかソワソワして何にも手につきそうにない。
時刻が17時を過ぎると、雨は一段と激しさを増していた。
その頃、Apartment RIKYU 住人さんからメッセージがありお部屋である問題が発生していること
が判明した。すぐにお部屋にお邪魔し現状を確認したが、すぐに関係者に事態を報告したが、
すぐ改善対応することはできず そのまま台風が過ぎるまで我慢してもらうしかなかった。
約1年前に大規模修繕工事をしたばかりであるが、台風であるからといっても問題が
発生してしまう状況に、とても残念な思いであった。
でもとにかく、台風をやり過ごしたら対策をしっかりやるしかない。
気を取り直してテレビの情報を見つめながら台風の状況を注視していた。
午後9時を回る頃、予報通り一段と雨風が強くなってきた。
我が家の窓もブルブル振動している。雨が全開にしたシャワーのように上から叩きつけてくる。
「うわーー、ちょっとスゴイな、、、」 今ちょうどピークかな?
携帯を見ると、今度は別の住人からのメッセージで停電していると言う。
「わー、停電?? うちは電気ついてる !?」
「今、ちょっと出れないのでしばらくやり過ごせますか?」と返信。
「はい、大丈夫です」とリプライあり。
ちょっと今、外出れないなー、と思いつつ窓から外の状況を確認していた。
ちょっとすると、バキッ!!と大きな音がした。
「えっ!! Apartment RIKYU 最大の危機到来か??」と脳裏によぎり、ここはとにかく
確認しなければと決死の思いで、玄関ドアを開けて外にでた。
台風の風向きが逆側だったようで、想像していたよりも普通に廊下を移動することができた。
「たしか、こっちの方で音がしたような、、」よく観察してみる。
先日取り付けてもらった目隠し用の木材が、とんでもないスピードでブルブル震えている。
ものスゴイ振動だけれど、音がでるような破損はあたりに確認でいない。
「あーー、大丈夫かなー、、、、、」と思いつつ、そのままさっきの停電状態のお部屋まで
移動した。連絡をとって中に入れてもらうと、ブレーカーの一つが落ちているだけだった。
「これで、どうですか? 電気つきますか??」と聞くと
「ちょっと待って、 パチ、 あ!」無事に電気が復帰。
とにかく重大な問題でなくてよかった。とホッとして自宅に戻った。
自宅に戻り、扉を開けるなり妻と子供が焦った声色で話しかけてきた。
「大変、大変、、、、隣の家の屋根が取れそう!!!」と言う。
「えっ!!」
外に目をやると、隣のマンションに屋上にあるプレハブの屋根がバッタンバッタンと風に
なびいて今にも取れそうな状態になっている。
「わー、これ飛んできたらヤバイ、、」
すぐにApartment RIKYU 住民に情報共有し、屋根の状況を観察した。
おそらくこの時が台風の本当のピークで、バキッという音は屋根の止めが外れた音だった
ようだ。止めが外れた屋根は風をモロに受けで空に向かってソリ返っては戻り、ソリ返っては
戻るを繰り返しながら、どんどん可動範囲を広げていく。
数分後、とうとう屋根のほんの一部がつながったまま隣の民家に飛んで行き、隙間に挟まって
止まった。
まだ雨風は強い状態で、屋根のなくなったプレハブからは大量の断熱材があちらこちらに
飛びまくっていた。なんだか細かい部品も飛んでいる様に見える。
「いったん屋根が挟まって固定されているけど、また強風でこっちに飛んでくるかも」
そう思うと、とにかく恐ろしい。
何分くらいそうしていたのだろうか、ほどなくして風がおさまってきた。
雨もピーク時に比べてすこし弱くなったようだ。
これでなんとか屋根が飛ばなければ良いのだけれど。
幸運にも、その時は台風の暴風のピークで屋根はこちらに飛んで来ることはなかった。
台風をなんとかやり過ごし、日付が変わる頃サイレンとともに消防車がやってきた。
Apratment RIKYU の前の道路は封鎖され、さらに応援の消防の人たちも到着し総勢20名
くらいの男たちが、屋根のなくなった隣のマンションのプレハブの上にたち、いつ落下
してもおかしくない、引っかかったままの屋根を取り除く作業を始めた。
この作業は難航し作業が終わったのは早朝5時頃だったようだ。
私は安堵したこともあり、途中まで経過を見守っていたが3時になる前に寝落ちしてしまった。
今回の台風で建物を管理することの責任について考えさせられた。
天災であるからしかたない面は大いにある。しかしいったん被害を出してしまえば、
今回の消防の対応のように多くの人の協力を要請することになってしまう。
隣の屋根の件は人ゴトとも思えない。
Apartment RIKYU にも1年前まで 4階テラスに木造家屋が増築されていた。それは昨年時点で
築20年になろうとしていて、屋根の一部が腐って取れかけていたのだ。
もし、大規模修繕でこの木造家屋を解体していなければ、いくら事前に台風予報で注意して
くださいと言われても対策をとるにも時間がなさ過ぎるだろう。
RIKYU の木造の屋根が飛んでいけば、隣家に重大なダメージを与えることは容易に想像できた。
古い建物を維持・管理するということは、天災を含めて危機管理していく責任を負うという
ことなのだ。
あと脳裏に過ぎるのは、やはり昨年秋まであった塔屋の給水タンクだ。
今 地球温暖化の影響もあって台風が巨大化しつつ東に進路を変えつつあるらしい。
今後、今回の19号並の台風が東京直撃なんていうケースも普通にありえるように思える。
給水タンクが倒れでもしたら、それこそ想像することがでいないくらいの甚大な被害を
出していたと思う。
RRPで時間と手間をかけて改修しても発生してくる様々な問題を、理解してくれる住人さん
の存在がなければ、築古の建物を維持・運営していくことはできないということ。
日々、重大な問題を発生させないように危機管理していかなければならないということを
今回の19号を経験して再認識しました。
今年もまだ台風が再びやってくる可能性もあります。
気を引き締めてやっていきたいと思います。