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新たなパートナーと共にリスタート

RRP小説 第5話

滑り出しは順調

紹介が遅れたがこのブログを書いているのは、RRPことRikyu Renovation Plan を代表運営している

五十嵐志郎(40)である。親から相続した都内の築古マンションをどう運営していったらよいのか、試行錯誤しなからすでに10年が経過した。以前は外資系の法人向事務機営業をしていたが、マンションを引き継ぐタイミングで脱サラした男である。詳しい紹介はまた機会があれば綴って見たいと思う。

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推薦をもらっていたのでほぼそこに決めようと思ってはいたが、まだ一度もあったことがなかったので、青山さん同席のもと梅宮組と面談をすることにした。

「面談は木曜日の午後でセッティングして良いでしょうか」と青山さん。

「えーと、木曜日ですね ちょっとまってください、、あ、大丈夫です」と私。

「それでは木曜日に設定します」

青山さんには梅宮組の梅宮さんについて、少し話を聞いていた。

女性社長でかなり元気のいいタイプで、話はじめると止まらないとのことだった、

女性で内装関係の社長をやっているということで、かなり気合いの入った人なんだろうな、と漠然とイメージを抱いた。女性で現場を仕切るというのは、おそらく並大抵のことではないだろう。

率先して作業服、安全靴で現場に入って、パキパキ指示を出したりしているんだろうな。

私はまだ会ったことのない女性社長のことを考え、勝手にイメージを膨らませていた。

まだ修繕工事の最後の微調整でバタバタしていたこともあって、約束の日はすぐにやってきた。

約束の時間3分前ピンポーンとチャイムが鳴った。

「はい、どうぞお入りください」

すでに到着していた金岡さんが入り口の玄関ドアを開けた。

そして部屋に入ってきたのは、梅宮組の女性社長梅宮さんと、現場総監督の井上さん(中年の落ち着きのある雰囲気の男性)、現場担当の山内さん(若い素朴な印象の男性)の3人だった。

「本日はお忙しい中、お越しいただきましてありがとうございます」と私から話し始めた。

面談は名刺交換から始まり、RRPの建物の歴史、大規模修繕が終わったばかりということ、これからお願いする部屋のこと、RRPのコンセプト、そして工事する部屋はすでに住人が内定していることなどを30分ほど時間をかけて説明していった。

「そんなわけで、我々の計画している工事は賃貸なのですが、住人さんと打合せしながら工事内容を決めていく方法を採用したいんです。

それによって、工事をすすめながら変更箇所が出てくることが予想されます、照明の位置や、スイッチの数、洗面設備などはこれから決めてくことになります」

と私は説明した。

「あ、大丈夫です。まずおまかな間取りが決定していれば、そのあたりの変更はあまり影響がないので、最初の墨出しだけはお立ち会いいただきたいと思います」

と梅宮社長が言った。

「先ほど五十嵐さんが言ったように、我々は住人の方のための空間を作ろうとしています。よく五十嵐さんに怒られるのですが、建築家のための空間は作らないでください、奇抜なデザインは必要ありません、デザイン優先でプランしないでくださいと良く言われています」

と建築士の青山さんが説明した。さらに青山さんが続ける。

「住民のために空間を実現するために、工事前から内定者と打合せを実施しています。たんなるリフォームでなく、あらたな生活を実現するための空間を作っていくために単なる請負というのではなく、我々RRPのパートナー企業として一緒にやっていければな、と考えているんです」

 実際我々はRRPに関わる人すべて、住人さん業者さんなど分け隔てなく関わる人すべてをパートナーという関係で関わっていきたいと思っていた。

「設計内容などを現場で打合せしながら、よりよい方向に持っていきたいと思っています、

どうぞよろしくお願いします」

と青山さんが伝えた。

「ありがとうございます、我々もRRPさんとは初めてのお付き合いとなりますので、全力でやらせていただきたいと思います。現場には経験豊富な井上、そして山内が入ります、もちろん私も毎日ではありませんが現場には来る予定です」

と梅宮社長が言った。

「あのーひとつお願いがあるんですが」 と私が切り出した。

「RRPでは工事の様子を写真や動画で記録しているんですが、御社の工事中の様子を撮影させていただいても大丈夫でしょうか?」

ちょっとした沈黙のあと、梅宮社長が言った。

「えー、うちの大工は強面ですよ、あははは」

「工事の様子は現場写真を都度お送りしますので」

そう言って梅宮社長は話題を変えようとしたように感じられたので、

「あ、わかりました」 と私はこの話題を切り上げた。

 大規模修繕工事をはじめ、実施してきた工事は基本的に全て写真と動画に記録している。

それは今後工事の記録が重要な意味を持ってくると思っているからだ。

写真を撮ってすぐSNSにアップするのが目的ではない。新たな空間が完成し、新たな生活が始まってしまえば以前の記憶は簡単に消滅してしまう。どのような過程をへて現在の RRP が出来上がってきたのかを情報として共有することがとても大切なことだと考えているのだ。今後 RRP が過去の時間を思い出すために記録に残しておくことは、RRPプロジェクトの重要な要素のひとつだと考えている。

しかし、梅宮組の梅宮さんにはそのあたりの思いが伝わらなかったようだ。

また時期を見てお願いすれば良いか、と思い直して面談を終えることにした。

 

 「それではこれからよろしくお願いいたします。今回御社に工事をお願いすることになったのは、工期を短縮するためです。3部屋同時工事で来年の2月末までに2部屋、4月までに1部屋を完成させるということで、よろしくお願いいたします。」

「はい、わかりました。それでは契約書を明日にでお持ちいたします。」

こうして、RRP に新たなパートナーが誕生した。

はじめての工務店、これからどんなやりとりをして、どんな空間が生まれてくるのか?

そう思うと気持ちがワクワクした。

まずは明日の契約、あと 解体工事のために至急まだ部屋に保管中の品々をどこかに移動しなくては。

また忙しくなりそうだ。

(この物語はフィクションです)